英語の母音は数多くありますが、その中でも使用頻度No.1(母音全体の約25%)が/ə/(シュワ)なんです!
だからこそ、最初に/ə/(シュワ)を学ぶと効率がいいですよね。
この記事を書くために参考にした書籍をご紹介します。
発音をしっかりと学びたい人向けの良書です。
/ə/の名前はシュワ(Schwa)または 曖昧母音(あいまいぼいん)
先ずは/ə/の名前をご紹介します。
英語ではSchwa(シュワ)、日本語では曖昧母音(あいまいぼいん)と呼ばれています。
発音記号は/ə/のように「逆向きe」で表記されます。
英語の母音全体の約25%が瞬時にマスターできる即効性の高い/ə/(シュワ)
/ə/(シュワ)は弱音節で現れる母音の代表格です。
英語の「強弱リズム」は「弱」の概念を最初に理解し、身に付けることで、初心者レベルでも英語らしいリズムで発音できるようになります。
また、/ə/(シュワ)を習得すると、今まで聴こえなかった音が「聴こえなくても良い理由」とわかるため、リスニング力も向上します。
/ə/(シュワ)は日本語に無い音なのでカタカナで表記することはできません。
例えばaboutはカタカナで「アバウト」と書きますが、発音記号で表記すると /əˈbaʊt/です。そうすると「ア」と/ə/は同じ音だと思い込んでしまいますが、厳密にいうと違います。
微妙な違いですが、ここを理解するかしないかで英語の発音を獲得できるかどうかの分かれ道と言えるほど重要なポイントなので、最初に押さえておきたいですね。
/ə/(シュワ)には基本的な音はあるのですが、元の母音の音に影響を受けるので、出現場所によっては「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」のどれにでも聴こえます。日本語の「アイウエオ」を更に曖昧にした音です。
そのため「曖昧母音」と呼ばれています。
/ə/(シュワ)とはどのような音色を持つ音なのか?を知ると、今までの疑問が解消されてスッキリしますよ。
では、更に/ə/(シュワ)を深掘りしていきましょう。
MRI映像でシュワ/ə/を発音する位置を確認しましょう
以下の図は横顔のMRI映像です。(University of Southern California出典)
/ə/を作る場所と、唇の開き方、口の幅のポイントをご確認ください。グリーンの文字は私の書き込みです。
上記のような口の形を作り、リラックス(弛緩)して寝起きのだらしない声を出すと/ə/(シュワ)の音が作れます。私はこの音を/ə/(シュワ)の基本形と呼んでいますが、先述したとおり/ə/(シュワ)には出現場所によって「ア寄り」「イ寄り」「ウ寄り」「エ寄り」「オ寄り」の音にも変化します。
口の形: 自然に閉じたときの口の幅と同じ幅で、親指を横に1本分を目安にフワっと口を開く
口の中: グリーンの丸で示した辺り(口の中央)で音を作る
舌 : 舌は動かさない(何もしない)
筋肉 : 唇・舌・頬の筋肉は緩めてリラックスする
音色 : 短くて小さい声で曇った「ア」と「オ」の中間的な音(寝起きのだらしない声)
母音チャートで中舌中央母音(なかじたちゅうおうぼいん)の位置を確認する
/ə/(シュワ)は音声学の専門用語で中舌中央母音(なかじたちゅうおうぼいん)と呼ばれています。
以下の母音チャートで中舌中央母音である/ə/(シュワ)の位置を確認しましょう。
口の開きは「中央」ということで軽くフワっと開きますが具体的には親指を横に入れる程度に開くと良いでしょう。
上記の図のとおり「中舌」とは舌の前・中・後のうち「中」付近で発音するということです。
通常、黒丸の左側が非円唇(唇を丸めない)、黒丸の右側が円唇(唇を丸める)ですが/ə/シュワは「何もしない口」なので左でも右でもない線上に記載されています。つまり非円唇でも円唇でもないということです。
このように母音チャートとMRI映像を照合して母音の口の形や位置を読み解きましょう。
alertで「ア寄りの/ə/」を聴いてみる
/ə/には「基本形の音」がありますが、元のスペルaに影響を受けるので「ア寄りの曖昧な音」として発音されています。 先ずはネイティブ音声を確認してみてください。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのalertのページにジャンプしますので/əˈlɝːt/の/ə/の音に耳を傾けてください。日本語の「ア」にかなり近いですが /ˈlɝːt/より「短く小さい声で」発音されているのが確認できます。
- alertは2音節の単語
- 第2音節「lert」に強勢が乗る
- 第1音節「a」は無強勢・・・/ə/は無強勢で出現する
alertをカタカナで書くと「アラート」ですが、実際の音が日本語とどう違うかを確認しましょう。
日本語感覚だと、「ア」「ラー」「ト」と音を分けたいところですが、英語の音の分け方は「a」「lert」です。
「a」「lert」は2つの音の塊なので「2音節」と捉えます。
このように分けられた音の区分を「音節」といいます。
日本語と英語では音節の境界線が違う点に着目してください。また、英語の音はカタカナで表現できないので、
以下の図で発音記号でみてください。
発音記号を読み解くには母音や子音だけでなく、記号の意味も知っておく必要があります。
例えば /ˈ/ は強勢記号といいますが、強勢(ストレス)の乗る音節の直前に /ˈlɝːt/ のように表記されます。
つまり強勢が乗る/ˈlɝːt/は「長く大きい声」で、無強勢の/ə/は「短く小さい声」で発音しましょうという指示記号だと理解してください。
音節を分ける記号は /./で、これは「音節境界」といいます。
/ˈlɝːt/のように強勢記号/ˈ/がある場合は、音節境界/./は表記しないことになっているということも知っておきましょう。
また、音は「母音で数える」ということも知っておく必要がありますね。母音の上で手を叩くと、alertの場合2回叩くことになります。つまり音が2個なので2音節、と答えが導きだせますね。
/ə/(シュワ)は弱音節だけに出現する
次に、第一音節が /ə/ 、第二音節が/ˈlɝːt/という感覚を養います。
弱音節は短く小さい声で、強音節は長く大きい声で発音します。
音節の理解を深めるために練習時は音節毎に区切りますが、単語として読む場合は繋げて読んでくださいね。
音節ごとに発音練習することが、句・節・文など複数の単語を連続で読むときのリズム感覚を養う土台となりますから母音や子音などの音素と同じレベルで重要な要素です。ですから「音素・音節・強勢」はセットで学びましょう。
それではおさらいです。
/ə/は元のスペルaに影響を受けるので「基本形の/ə/」というよりも「ア寄りの曖昧な音」として発音されているという点に着眼してください。
最後にもう一度ネイティブ音声を聴いてみましょう。
今回は /ə/だけに焦点を当てているので、まだ習っていない/ɝː/などについてはネイティブ音声を良く聴いてなるべく似ている音を出しましょう。
更に詳しく学びたい人は以下の/ɝː/の記事をお読みください。
analysisで「イ寄りの/ə/」の音を聴いてみる
/ə/には「基本形の音」がありますが、元の音「y」(発音は「イ」)に影響を受けるので「イ寄りの曖昧な音」として発音されています。 先ずはネイティブ音声を確認してみてください。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのanalysisのページにジャンプしますので/əˈnæl.ə.sɪs/の2番目の/ə/の音に耳を傾けてください。日本語の「イ」に近い音なので「イ寄りの曖昧母音」と捉えましょう。
- analysisは4音節の単語
- 第2音節「nal」に強勢が乗る
- 第1音節「a」第3音節「y」第四音節「sis」は無強勢・・・/ə/は無強勢の第1音節と第3音節で出現
日本語感覚だと、「ア(a)」「ナ(na)」「リ(li)」「シ(si)」「ス(su)」と音を分けたいところですが、英語の音の分け方は「a」「nal」「y」「sis」です。
「a」「nal」「y」「sis」です。は4つの塊なので「4音節」と捉えます。このように音を分けた区分を「音節」といいます。
日本語と英語では音節の境界線が違う点に着目してください。
ここから音の話しになります。
第1音節の/ə/はスペルがaなので「ア寄りのシュワ」で、第3音節の/ə/はスペルがyなので「イ寄りのシュワ」となります。
最後にもう一度、ネイティブ音声を聴いてみましょう。
todayで「ウ寄りの/ə/」の音を聴いてみる
/ə/には「基本形の音」がありますが、元のスペルo(発音はウに近い)に影響を受けるので「ウ寄りの曖昧な音」として発音されています。 先ずはネイティブ音声を確認してみてください。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのtodayのページにジャンプしますので /təˈdeɪ/の/ə/の音に耳を傾けてください。日本語の「ウ」に近いですが /ˈdeɪ/より「短く小さい声で」発音されているのが確認できます。
- todayは2音節の単語
- 第2音節「day」に強勢が乗る
- 第1音節「to」は無強勢・・・/ə/は無強勢の「to」で出現
以下の画像で「母音は赤色」「子音は黒色」と分類していますが、スペルの「y」は子音なのに、赤色になっているのはおかしいと思いませんか? これはスペルは確かに子音なのですが、音は母音なのでここは音に合わせて赤色にしてあります。
日本語感覚だと「トゥ」「デー」と音を分けたいですよね? たまたま、英語でも「to」「day」と分ける2音節なので、音節の数においては日本語と英語のズレはありません。
気を付ける点は/deɪ/「ディ」と「ィ」の音もきちんと発音してくださいね。日本語的な読み方で「デー」と伸ばすとのっぺらぼうのように聴こえます。
最後にもう一度、ネイティブ音声を聴いてみましょう。
emergencyで「エ寄りの/ə/」の音を聴いてみる
emergencyをカタカナで書くと「エマージェンシー」ですが、実際の音が日本語とどう違うかを確認しましょう。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのemergencyのページにジャンプしますので /ɪˈmɝː.dʒən.si/の第3音節の/ə/の音に耳を傾けてください。元々が「e」なので「エ寄りの曖昧母音」と捉えましょう。
- emergencyは4音節の単語
- 第2音節「mer」に強勢が乗る
- 第1音節「e」第3音節「gen」第4音節「cy」は無強勢・・・/ə/は無強勢の「gen」で出現。
emergencyは下記の表のように4つに分けられるので4音節の単語です。
日本語感覚だと「エ」「マー」「ジェ」「ン」「シー」と音を分けたいところですが、英語の音の分け方は「e」「mer」「gen」「cy」です。
「e」「mer」「gen」「cy」は4つの音の塊なので「4音節」と捉えます。このように音を分けた区分を「音節」といいます。日本語と英語では音節の境界線が違う点に着目してください。
最後にもう一度、ネイティブ音声を聴いてみましょう。
infectionで「オ寄りの/ə/」の音を聴いてみる
/ə/には「基本形の音」がありますが、元のスペルo(発音はオに近い)に影響を受けるので「オ寄りの曖昧な音」として発音されています。 先ずはネイティブ音声を確認してみてください。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのtodayのページにジャンプしますので/ɪnˈfek.ʃən/の第3音節 /ʃən/の/ə/の音に耳を傾けてください。
- infectionは3音節の単語
- 第2音節「fec」に強勢が乗る
- 第1音節「in」第3音節「tion」は無強勢・・・/ə/は無強勢の「tion」で出現。
infectionを音節に分けると、以下の表のように3音節で構成されていることが分かります。次に強弱をチェックすると、第2音節が強く、その他の音節は弱いことがわかります。確認ポイントは/ə/(シュワ)は弱い音節に出現していることです。
第1音節 (弱) | 第2音節 (強) | 第3音節 (弱) |
---|---|---|
in | fec | tion |
ɪn | ˈfεk | ʃən |
スペルが「o」なので「オ寄り」の曖昧な音に聴こえることをネイティブ音声で聴いてみましょう。
以下のボタンをクリックするとCambridge Dictionaryのinfectionのページにジャンプします。
/ɪnˈfek.ʃən/の第3音節の/ə/の音に耳を傾けてください。
/ə/が「オ寄りの曖昧母音」に聴こえましたか?
不冠詞aの弱形は「ア」ではなく/ə/(シュワ)です
a cat はお馴染みの単語ですが、不定冠詞のa を大きな声で明瞭に「ア」と発音していませんか?
明瞭な「ア」は違和感があるので、これからはあいまいな/ə/(シュワ)で発音するようにしてください。
不定冠詞aに対する/ə/(シュワ)は、スペル「a」(ア)の音が弱く曖昧になった音です。
特に強調せず「普通に」話すときの不定冠詞aは、/ə/(シュワ)で発音します。
/ə/は、常に弱形(短くて小さい音)だと身体に染み込ませましょう。
不冠詞aの強形は「ア」ではなく/eɪ/です
もし、不定冠詞aを強調したいときは、/ə/(シュワ)ではなく/eɪ/に発音が変わります。
普通に話すときと、強調して話すときの違いは以下のとおりです。
普通 a cat /ə/ /kæt/ ・・・/ə/ は「ア」を弱く曖昧に発音する音
強調 a cat /eɪ/ /kæt/・・・/eɪ/は「エィ」と強く明瞭に発音する音。
スペルは「a」は強調する時とそうでないときの発音が異なる点に着目してくださいね。
まとめ:/ə/(シュワ)は口の形を作らない曖昧な「アイウエオ」
発音記号/ə/だけをみると同じ音なのかな?と思いがちですが、元のスペルをベースに弱く曖昧にする音だということが分かりましたね?
英語はスペルと音が一致しないことで有名が言語ですが、/ə/(シュワ)は曖昧ながらもバラエティに富んだ音です。
英語は日本語と比べて母音の数が沢山ありますが、まず母音の中で最も使用頻度が高い/ə/(シュワ)から攻略することで、母音全体の約25%の母音が一気に習得できるし、聴こえるようにもなりますから、即効性の高い母音ですよね?
実際に母音全体の25%かどうか、を検証してみたので気になる方は以下の記事も合わせてご一読ください^^
発音を最初に習得しない代償は大きい
日本語以外の言語を習得しようと思ったら、面倒でも先ずは発音(音素)から取り掛かりましょう。
発音を後回しにすると、テストで高得点取れても「通じない英語」という悲しい結果が待っていますから。
自己流の癖がついてから後で直すのは、最初から発音を学ぶ何倍もの苦労が要ります。
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延べ人数5,000人以上に発音矯正の指導経験のある私が懇切丁寧にご指導させていただきます。
ストアカからご予約いただきましたら発音のお悩みをスッキリと解決いたします。
通じる英語を実現するには「発音矯正」+「実践英会話」が最強
私の発音矯正講座を受講してくださっている生徒さんで漏れなく英会話が上達しているのは「発音矯正」+「実践英会話」を実践されている方です。
ここで想定している生徒さんの英語レベルはTOEIC800点以上です。
もし、この記事を読んでいるあなたのレベルがTOEIC800点以下のばあいでも「発音矯正」+「実践英会話」は最強の上達方法になりますが、同時に文法力と語彙力を強化する必要があります。
発音矯正だけ、または英会話だけ、という方法では残念ながら期待する上達は見込めません。
文法力と単語力の強化ご希望の方は私の発音矯正講座にて、勉強方法をご説明しますのでその旨お知らせくださいね😊