ギターが弾けるようになるには指が痛くなってもそれ以上に練習が必要
先日、発音矯正講座の受講生KSさんのレッスン中に「発音習得はギターが弾けるようになる過程と似ている」というお話しになり、大いに共感を得たのでこの記事を書こう、と思い立ちました。 KSさんはカナダ在住の日本人男性で、11月末からベーシックコースの受講開始されました。
以前、ギターの練習をされていたそうで、弾けるようになるまで指の皮が厚くなりマメができて痛いけれど、それを乗り越えて練習し続けなければ弾けるようにならない、というお話しをしてくださいました。
大学時代、指の腹に弦が食い込む痛みに耐えられずギターを諦めた。
私自身、大学時代にギターを購入しましたが結局は弾けないまま手放してしまいました。ギターを弾けたらカッコいいなぁ、と思っていたのですが現実はそんなに甘くはありませんでした。確かに弦を押さえる指が痛くなりました。ですが、マメができるほど練習することもせず諦めてしまったのは、それほどやりたいことではなかったのかなと思います。
弦が4本のベースなら弾けるかも?は甘かった。そして諦めた。
その後「ベースなら弦の数が少ないから弾けるかも!?」という浅はかな考えでベースを購入しましたが、弦の数に関係なく弦を押さえる指が痛いことに変わりありませんでした。しかもベースの弦の方がギターよりも若干太めなので、更に指が痛くなり、早々に諦めてしまいました。
女性の手は小さい分、弦を押さえる力も弱いから弾けなくて当然だよね、と自分を慰めてみましたが周りを見回すと女性ギタリストや女性ベーシストは存在するワケで、言い訳にもなっていないことに反省。軽い気持ちで始めたら無駄にお金と時間を消費してしまった、という痛いお話しでしたが、これって軽い気持ちで英語を始める方にも共通しているのではないでしょうか?
英語の発音も口の筋肉の痛みを乗り越えなければならない
普段使っていない身体の部位を使わなければならない、という意味においては楽器の習得と英語の発音習得は似ています。英語には日本語に無い音素が数多くあります。例えば/r/は日本語に無い音素で、唇と舌の筋肉を同時に使わなければならないので特に難しいです。その他、/f/・/v/なども発音練習をしていると口の周りの筋肉が痛くなるとおっしゃる生徒さんがいらっしゃいますが、それは正解です。動きが定着するまでは正直かなり疲れます(笑)
英語を綺麗に発音するためには「心の痛み」も乗り越えなければならない
英語は大袈裟に「縦」「横」「丸」と唇の形を作る音素もありますが、逆に/ə/のように唇をあまり開いてはいけない音素もあります。要は英語は口の動きが激しいということです。それに引き換え日本語はあまり口を動かさない言語ですから、大袈裟に口を動かす際に一種の恥ずかしさ(心の痛み)が伴います。ですが、これを乗り越えなければ流暢な英語を話すレベルに到達できません。
発音ができない原因は「基本知識の不足」「正しい練習量の圧倒的な不足」
英語の発音に於ける基礎練習とは「音素」「音節」「強勢」です。/r/や/l/を単体で口の形が作れるだけでなく、単語単位での発音練習が必要です。単語には音節という単位がありますが、日本人学習者の大部分が音節を無視した発音をしています。
日本語は大部分の音節が「子音+母音」で構成されていますが、英語は「子音+母音+子音」を基本とし、その他にも様々な音節構成があります。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
英語の音節は「子音+母音」「母音+子音」「子音+子音+母音+子音」は「子音+母音+子音+子音」など様々な校正になっていることがお分かりいただけたかと思います。
音節と強勢は同時に学ぶべき必須項目ですが、ほんの少しかじったくらいでは正しく理解することはできません。その理由は、日本語と英語の音の成り立ちがまるで異なるからです。そのためには膨大な量の練習が必要です。
「正しい発音知識」x「正しい発音方法での圧倒的な練習量」=「通じる発音」
私がギターもベースも弾けるようにならなかったのは「圧倒的な練習量」が不足していたのは明らかですが、我流で取り組んでいたので「正しい知識」や「正しい発音方法」で練習していたかどうかも怪しいところです。どのような技術も、最初の壁を乗り越えるには身体的、又は精神的な痛みが伴う、ということを知っていればもっと前向きに取り組めたのかもしれませんね。
英語の発音も同様で、練習初期は口の周りの筋肉が痛くなります。そしてなかなかできるようにならないという精神的な痛みも伴います。できるようになるには「恥ずかしさ」も乗り越えなければいけない、ということを最初に知っておけば少しくらいダメージを受けても継続ができるのではないでしょうか?
英語の発音習得は「技術習得」と捉えてください。決して簡単ではありません。
「この教材であなたも2か月で英語がペラペラに!」などという謳い文句をよく見かけますが信じない方が良いでしょう。
私は高校時代に英検2級を取得し、外国語大学の入試を突破しましたが英会話に関してはお粗末なものでした。ワーキングホリデー制度を利用して21歳の時にオーストラリアに行って初めて自分の英語がいかに通じない、聴いても分からない、つまり「会話ができない」という現実を突きつけられて大きな石で頭を殴られたような衝撃を受けました。
日本に戻ってから相当真剣に勉強してTOEIC730点を取り、社会人になり25歳頃、英検準1級・TOEIC815点を取りましたが、それでも英語を「ペラペラ」と話せませんでした。文法力も語彙力もある程度兼ね備えているはずなのにどうして話せないのか、当時の私には分かりませんでした。
英語を話さざるを得ない環境に身を置いたら話せるようになった
「ある程度話せる」と感じられるようになったのは28歳頃でした。それは1年半にわたるバックパッカー1人旅を経た後のことでしたが、大きな要因は「圧倒的な練習量」です。発音に関しては「正しい知識」があったので後は練習量の問題だったのです。
オーストラリア滞在中は、英語を話すのが恥ずかしかったので日本人とつるみ英語を避けていましたが、1人旅の場合、頼るのは自分の英語力しかありません。どんなことでも全て英語で交渉しなければならなかったので、相当チカラが付きました。中国など英語が通じない環境では漢字を書いて見せたり、ジェスチャーで何とか切り抜けたり大変でしたがメンタルが鍛えられたのは確かです(笑)
2か月で英語が話せるようになるか? 条件によってはYESです。
「正しい発音知識」x「正しい方法での圧倒的な発音練習量」がどれくらいの量なのか?が気になると思いますが、目安として以下のとおりです。【注意】この目安時間はTOEIC800点以上の文法力と語彙力を既にお持ちの方で、真剣に英語習得をしたい方が対象です。
◆発音知識習得と練習:500時間
◆実践英会話:500時間
◆合計1000時間
つまり、1000時間を2か月でこなせば話す事ができるようになります。ペラペラとまではいきませんが、始めた頃と比較すると飛躍的な上達は見込めます。1日17時間取り組めば可能だと言えます。起きている時間は全て英語の勉強と実践に充てなければなりませんが、これくらいやらないと話せるようにはなりません。
社会人の場合、会社勤めしているので1日17時間は不可能ですが、転職期間中など、たっぷりと自由時間がある方にお勧めの方法です。
集中的に1000時間「発音」と「会話」に取り組めば一段上のレベルに行ける
私は英語を話すためのロードマップが分かっていませんでした。そのため、回り道をして無駄に長い時間をかけてしましました。最終的に海外駐在の目標はクリアできましたが、あまりにも険しい道を一人で歩いたので途中で疲弊してしまい、勉強しても勉強してもできない自分を責めたり泣いたりしていました。
でも、自分を責めても泣いても状況は何も変わりません。一旦始めた以上「できるまで前進し続けるしかない」と当時は腹がくくれていませんでした。だから、どうして自分は英語ができるようにならないのだろう?と愚痴を言っては時間を無駄にしていました。今思えば愚痴る時間があるなら1語でも単語を覚えることに使えばよかったのです。「やる」と決めた以上、目標に向かって1mmでもいいから前に進むしかないのです。
発音習得には手順がある。いきなり⑤から始めても身に付きません。
英検準1級・TOEIC815点でも満足に話せなかった過去の自分にアドバイスするならば「発音」と「会話」を同時進行で取り組むということです。このまま文法と語彙力を伸ばし続けても話せるようにはならないと気付いていましたが、何をすればよいか当時は分からなかったのですが、今なら分かります。
それは、以下の順番で発音をマスターすることです。
①単語で「音素」「音節」「強勢」を実践
②短文で「連結」「脱落「同化」を実践
③短い会話文で「リズム」「イントネーション」を実践
④モノローグのRepeating, Overlapping, 暗唱を実践
⑤ダイアログのRepeating, Overlapping, 暗唱を実践
こう書くと簡単そうですが、相当の粘り強さが必要となります。全ての単語と文を音声認識で文字化できるかどうか確認します。正しく文字化されない場合は、正しい発音記号と間違った発音記号を照合し、文字化されない原因を突き止め、矯正します。3回連続で安定的に発音できることが合格基準です。
会話は会話をすることでしか上達しない
発音練習ばかりしていても、肝心の会話練習をしなければ会話ができるようにはなりません。こんな当たり前のことですが、多くの方が会話することを躊躇しています。「今は話せないから話せるようになったらやってみる」と皆さん仰いますが、それは何時ですか?TOEIC800点以上ある方は文法力と語彙力は十分にあるのだから、先ずは飛び込んでみることが大切です。
待っていてもチャンスは向こうからはやってきませんから、こちらから向かっていくしかないのです。私はオーストラリアで英語を話す事に躊躇して日本人とつるんでいたのであまり英語が上達しませんでした。当時は若かったし、時間はたっぷりあると思っていましたが、そのような考えでは目標達成など到底無理ですよね。
最良の学習方法は発音と会話を同時に行うことです。そうすることにより、発音レッスンで学んだことを会話で活かせるし、会話で通じなかったことを発音レッスンで質問して直ぐに解決することができます。英語圏在住の方は英語を話す機会がありますが、英語環境がない方はオンライン英会話スクールという強い味方があります。
私がオーストラリアに滞在したときは9か月で150万円くらいかかったと思います。でもNative Campなら月6480円で英語話し放題です。9か月で6万円弱です。こんなお得に英語が勉強できる時代になったのだから活用しない手はありませんよね? 英語圏に住んだからと言って英語が話せるようになる訳ではありません。この点についてもカナダ在住のKSさんと大いに盛り上がりました。
私のように海外に行ってから辛い思いをするよりも、日本でできる限りに準備をしておくことをお勧めします。本気で英語を習得したい方は先ずは発音レッスン500時間とオンライン英会話500時間をセットで1000時間を目標にしましょう。2か月は非現実的なので、ご自身に適したペースで1日の学習時間を算出されると良いと思います。
1日3時間毎日学習すれば12か月で、1日6時間なら6か月で結果が出せます。壁を破るためには圧倒的な練習量が必須です。何年かけて壁を乗り越えるか、逆算すれば1日の投入時間が導き出せますから計画性をもって学習を開始しましょう。
「英語習得は困難を極める」という真実を発信するのが怖かった
英語は文法面で日本語と対極にあり、発音面でも困難を極めます。それなのに巷では「英語が簡単に習得できる」という謳い文句の広告宣伝が多いのはなぜか? それは甘い言葉でアプローチした方が教材が売りやすいからです。私のように本当のことを書くと敬遠されるからです。
発音指導を始めた当初は生徒さんに真実をお伝えすることに躊躇してしまい、大いに悩みました。ですが8年間蓄積した経験と、生徒さんからのご要望により、「英語習得は困難を極める」という真実を発信する決心がつきました。それでも英語に挑戦し続けたい方に向けて「正しい知識」と「正しい発音方法」で「圧倒的な練習」をすれば習得が可能である、という情報発信をしていきたいと思います。