大人はフォニックスではなくフォネティクス(音声学)を学ぶことをお勧めします

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    幼少期に培ったリズム感は体の芯に残っている

    子供は聴いた音をそのまま発音ができると言われていますが、研究によると言語習得の臨界期は9歳頃までだそうです。

    私自身、メキシコで生まれ1年滞在し、スペインで3歳半~5歳半の2年間、現地の幼稚園に通っていた経験を通して当時周囲が話すスペイン語を自然な発音真似をしていた記憶がありますし、スペイン語は話せませんが、今でも発音とリズム感だけはそのまま定着しています。

    10~12歳の2年間はフランスに滞在しました。半年は現地校に通い、残りの1年半はパリ日本人学校と家で日本語ばかり話していたので、残念ながらフランス語も殆ど話せないまま帰国してしまいました。

    もし、フランス語環境に身を置いていたならば今頃フランス語堪能になっていたかもしれませんが、逆に日本語が話せなくなっていた可能性は高いと思います。当時、ドイツで働く従弟のところに1週間ほど遊びにいきました。そこで、従弟の同僚の日本人家族とご一緒ししました。その家族の娘さんが確か17歳くらいでしたが、ドイツ語の方が流暢で日本語が片言だったので、違和感を持った記憶があります。

    フランス語が話せないまま日本に帰国し、英語に出逢う

    私はそのままフランスで永住したかったのですが、事情によりパリ日本人学校を卒業後、中学校1年生から香川県の中学に通うことになりました。そして、そこで初めて英語に出逢ったのです。

    今でも覚えているのは英語の rabbitという単語を学んだときに、フランス語のlapin(ラパン)と違うんだなと思ったことです。スペルもそうですが、発音が全然違うことに驚きました。振り返ると英語を学ぶ過程において、常にフランス語との相違点や類似点を考えていたように思います。フランス語が流暢に話せなくても子供時代にスペルや音感はある程度身についていたんですね。

    後で知った事ですが、イギリスは1066年のノルマン征服以降、支配階級が約300年間もフランス語を使っていたのでフランス語由来の英単語が約1/3もあるんです。子供時代はそんなことを知る由もなく、英単語を学ぶ際に「フランス語に似ている音があるな」くらいにしか考えていませんでした。そのような歴史を知ったうえで英語を学んでいたら、面白さは倍増していただろうな、と今の私なら思いますが、子供の時は世界史が大の苦手だったので残念ながらそうはなりませんでした(笑)

    発音を感覚で吸収できたのは洋楽を歌っていたお陰

    幼少期にスペイン語やフランス語に触れた経験が、英語のリズム感を養うのに役立ったことは間違いありません。ですが、それに加えて中学2年生以降、洋楽を歌っていたことが発音習得に役に立ちました。当時、マイケルジャクソン、マドンナ、クイーン、エアロスミスなどが全盛期でしたが今のようにYoutubeで手軽に視聴できませんでしたから、テレビ番組をVHSビデオに録画して擦り切れるまで観ていました(笑) 

    当時はカラオケBOXも無かったので、家の中で大声で歌っては家族から「うるさい!」と怒られていました。どうしても歌いたくて、家の外で歌っていましたのでよっぽど好きだったんだろうと思います。当時はカセットテープをお店で借りて、ダブルラジカセでダビングをし、コピー機もなかったので歌詞カードは手書きでノートに書き写していました。左のページに英語、右のページに和訳を書き、分からない単語は紙ベースの辞書で調べて意味を書き出していました。イデオム等が分かっていなかったので、どうしてこんな和訳になるんだろう?と不思議に思いながら書き写していました。

    ジャネットジャクソンなどのプロモーションビデオを真似て歌いながら踊っていましたから陽気な子供だったことが伺えます。このようにして、英語の歌を歌って踊っていたのでリズム感覚が養えたのではないかと思います。

    発音が良いことと、英語が話せることは全く異なること

    どんな言語でも会話をするには「発音」「語彙」「文法」「会話練習」の4点セットが必要です。スペイン語やイタリア語のように、日本人にとって発音し易い言語であれば発音の壁は低いですが、英語や中国語などは発音が大きな障壁となります。ですから、発音軽視で語彙と文法を学習しても最終的には行き詰まります。

    では、発音が割とできる方だった私が会話が容易くできたかといえばそうではありません。語彙・文法もそれなりにスコアは良かったのですが「会話ができる」と感じられたのは途方もない努力の末のことでした。1万時間投資したあたりからようやく話せると思えるようになりました。言語習得は「〇〇だけできたらペラペラに!」などという甘いものではありません。「発音」「語彙」「文法」のレベルを上げることは当然のことで、更に「会話練習」量が少なければ、残念なことに箸にも棒にも掛かからないのです。

    発音が良くてテストで高得点を取っても会話に慣れていなければ話せない

    私は試験で高得点取れば英語が話せると思い込んでいたのですが、実際はそうではありませんでした。関西外国語大学に入学しキャンパスでアメリカ人留学生から”Where is the library?” と聞かれただけで、恥ずかしさで顔が真っ赤になり震えながら答えていた記憶があります。それほど英語を話す事に恐怖感がありました。

    大学4年生を休学してオーストラリアにワーホリに行った時もホストファミリーに「掃除機を借りてもいいですか?」と言うのにまごまごし、相手から言われたことが聴き取れなかったらどうしよう?と怖気づいていた時期もありました。大学卒業後は英語を使う仕事に就こうと張り切って貿易事務を始めたのですが、海外からの電話に出るのが怖くて逃げ回っていました。

    そんな自分が嫌で、大決心をしてバックパッカー旅行を決行したのです。神戸から船で中国は上海まで渡り、1ヶ月中国半周してベトナムに入りハノイからホーチミンまでバスで縦断し1か月半、その後カンボジアを通ってタイに入国しました。バンコクで3週間ほど仕事をしてお小遣いを貯めた後、マレーシア経由でインドネシアに渡り9か月で日本に戻りました。

    本当はインドに行きたかったのですが資金が底をついたので日本で半年ほど稼いでタイ経由でインドに渡りカルカッタから東海岸沿いにチェンナイまで列車とバスで移動して回りましたが残念ながら一周は叶わず日本に帰国することになりました。この旅を通して、今まで伸び悩んでいた英語が一気に話せるようになりました。その理由は、否が応でも英語を話さざるを得ない環境に身を置いたことで、大量に英語で会話をしたからです。

    このような経験を通してようやくある程度英会話ができるという自信を持つことができました。そして、自信がチャンスに繋がりアメリカ、中国、イギリスで駐在員として働く機会に恵まれました。海外に出たら、ためらっている場合ではありません。しかも仕事で使う英語は旅先での英語よりも責任が伴いますから毎日クタクタでした。話しても話しても苦手な分野の英語は苦戦しますが、中学時代と比べれば随分上達しています。

    「英語が話せる」と思えたのは総学習時間1万時間以上経ってから

    中学1年生からの英語学習時間を累計すると、優に1万時間以上かかっていると思います。仕事で使えるレベルになるには実務を行いながらが一番近道です。海外勤務のお陰で更に使えるようになったと思いますが、海外旅行で少し使いたいレベルであれば5000時間でも大丈夫でしょう。

    語学は学習を止めるとそこからレベルが下がるだけなので、一旦始めたら一生付き合うくらいの心構えが必要です。どのレベルを目指すかで学習時間は変わってくると思いますが、私の肌感覚では1万時間を目安にしておけば納得がいくレベルに到達すること間違いないでしょう。先に総学習時間を知っておけば、早い段階で時間配分ができるので有効です。

    特別に音感が良い人は発音記号を学ばなくても英語の発音習得ができる

    私は特別音感が良いわけではないですが、幼少期の海外体験と中学~高校時代に洋楽を歌いこんだことにより自然と基本的な発音習得ができました。中には稀なケースで幼少期に外国語に触れていなくても音感が優れている人は大人になってから外国語を習得を始めても、発音記号ナシでネイティブ音声を耳コピすることができる人がいますが、これも一般的な事例ではありません。

    ※ここでお断りを入れておきますが、私が基本的な発音ができたという範囲は「音素」「音節」「強勢」を指すのであって、「連結」「脱落」「同化」など一段上のテクニックが上手く使えていたわけではありません。実は、ここがネックになりかなり苦しみました。それについては別途記事を書きたいと思います。

    大部分の英語学習者がカタカナ発音から脱却できない理由は・・・

    一般的には大人になってネイティブ音声を聴いても真似ができず、カタカナ英語になってしまいます。母語が染みついているから仕方がないことですが、これを矯正するには発音記号から学ぶしか方法はありません。英語のスペルは例外が多すぎてスペルと音を照合するだけでは読みこなせないからです。

    アルファベットが漢字ならば、発音記号がふりがなのような役割を果たしていると考えてください。漢字が読むためのふりがなが読めないと困るのと同様に、英単語が読めない場合は発音記号を頼りに読み方を知るしか手立てがないのですが、肝心の発音記号が読めないのでお手上げ状態になっているということです。 

    大人の学習者が流暢に英語で話すためには発音矯正から入るのが最短距離

    前述した通り、一般的な学習者はカタカナ発音脱却のためには発音矯正から英語学習を始めるのが最短距離です。但し、発音矯正には段階があり、基礎レベルが「音素」「音節」「強勢」です。次に中級レベルの「連結」「脱落」「同化」を習得します。上級レベルで「ピッチワードの運用」を通してセンテンスに感情を込めることを習得します。

    発音矯正は、RとLの違いが分かれば発音ができるという短絡的なものではありません。文法知識と連動しているので、ある程度の文法力がないと英語のリズムの素となる内容語と機能語の区別をつけることができません。ですから文法面もバランスよく学ぶ必要があります。

    また、単語の意味が分からないと会話が途切れてしまいます。何十秒も考えてやっと思い出せる程度の単語は覚えているうちに入りません。1秒で即答できて初めて「覚えている」と言えます。通常は会話中に何十秒も待ってもらえませんから「1秒即答ルール」を発音・単語・文法全てに当てはめましょう。発音矯正の目的は会話ですから、常に会話をするための準備をしておかなければなりません。

    発音矯正の副産物としてスピーキング・リスニング・文法・単語もレベルアップする

    単語単位での発音矯正の次は、短いセンテンスで発音矯正をします。センテンスを理解するには文法力も単語力も必要となりますので、自然と全体的にレベルアップします。更に嬉しいことにリスニング力もスピーキング力も身に付くわけですから、発音矯正が最短で最強の英語学習方法と言えます。

    何十年も英語の勉強をしているのに英会話ができないと悩んでいる方は是非、発音矯正を集中して取り組んでみてください。大人の場合、フォニックスではなくフォネティクス(音声学)を学ぶことで発音の全容を掴むことができます。そうすると自信が生まれ、大きなチャンスを手にすることができるでしょう。

    決して簡単ではありませんが本気で英語をモノにしたい方は音声学を学ぶことをお勧めします。私が音声学の習得を勧める理由は、英語習得までに物凄く遠回りをしてしまったからです。これを先に知り、マスターしてから単語・文法・会話を学べば膨大な時間が節約できたと思うと残念でなりません。

    最終的に納得できる英語力を身に付けられましたが目標に到達するまでが長過ぎて気が遠くなりそうで何度も挫折しそうになりました。このような経験を通して、いま学習している最中の皆様には最初に音声学から始めるのが最短距離だと真摯にお伝えしたいのです。この先何十年かけても方向性が間違っていたら目指している英会話力は身に付かないかもしれません。

    英語を話すのは「実技」であるという心構えをすることで腰を据えられる

    音声学の習得は決して楽ではありません。例えばスポーツの世界でプロ選手になるのににどれだけの練習量が必要か考えてみると分かりやすいかもしれません。大人になってから英語を母語レベルで話すようになるのは難易度が高すぎるので非ネイティブとして十分レベルで考えてみると、スポーツでセミプロレベルと捉えることができます。それでも並大抵の練習量ではセミプロにさえ成ることは難しいでしょう。

    私の受講者様は音声学レッスンを受ける以外に、ハードな練習プログラムをこなしていただき、更に外国人講師との英会話にも取り組んでいただいております。短期で上達したい方は毎日1レッスン以上受講されておりますが、確実に発音が上達するとともに会話力も伸びています。目的達成までの時間を逆算すると1日の練習量が決まります。

    私は学生時代、目標到達までの時間や、学習方法を知らなかったので勉強していればいつか英語が話せるようになるだろうと思っていました。ですがどんなに勉強しても英語が話せるようにはならなかったので焦ったり悩んだりして勉強を放棄したこともありました。実はこのような時間が一番無駄だと後から分かりました。焦っても悩んでも英語力は伸びないのでひたすら学習するしかなかったんですよね。

    ですが参考書を片手に文法や単語ばかり勉強していても話せるようにはならないんです。そこが盲点でした。遠回りしてやっと気づいたのですが最短距離を実現する要素は「音声学」に詰まっていたのです。何度も言いますが、簡単ではありません。逆にいうと、難しいからこそ習得できる人も少ないのです。もし本当に簡単ならば英語で苦労する人がもっと少ないのではないでしょうか。

    英語は実技です。その実技を磨くことができるのが音声学の世界なのです。表面を撫でるような学習方法から脱却し、腰を据えて本気で取り組むことで目標とする英会話力を身に付けましょう!

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