目次
英語らしく聞こえる発音は「意味」と「音の設計」で決まる
※ 本記事は、実際の発音レッスンで使用した教材をもとに構成しています。
今回取り上げる英文
“He started composing at the age of five and wrote more than 600 pieces of music.”
(彼は5歳で作曲を始め、600曲以上の音楽作品を書きました。)
この英文を例に、英語の強弱リズムと音声変化を見ていきます。
英語が英語らしく聞こえるかどうかは、一音一音を正確に発音できるかよりも、
- どこを強く読むか(強勢)
- どこを弱く処理するか(弱化)
- 音と音をどうつなげるか(連結)
という 「リズムと音声変化」 に大きく左右されます。
この記事では、実際の英文を使いながら、
- 内容語と機能語
- 強弱のリズム
- IPA(発音記号)
- 音声変化(連結・脱落・弱化)
を 段階的に・論理的に整理していきます。
英語の強弱リズムをつくる「内容語と機能語」の見分け方
英語の文は、大きく次の2種類の語で構成されています。
- 内容語(content words)
→ 文の意味の中核を担う語
- 機能語(function words)
→ 文法的なつながりを作る語
英語のリズムは、内容語を強く、機能語を弱く処理することを前提に設計されています。
内容語(文の意味の中心)
- started composing(述語の中心)
- age
- five
- wrote
- more
- 600
- pieces
- music
これらは 情報量が高く、文中でリズムの山になりやすい語(または語群) です。
機能語(文法的なつながり)
- He
- at
- the
- of
- and
- than(※ more と組み合わさって比較構文を作るが、意味の中心は more にあり、than 自体は機能語として弱化されやすい)
これらは 意味を足すというより、構造を支える役割を持ち、通常は 弱く・短く発音されます。
STEP 2: 英語のリズムを可視化|強勢のつけ方(音節×ストレス)
英語のリズムは「強い/弱い」の二択ではなく、相対的な強弱の段階で成り立っています。
本記事では、理解しやすさのために 3段階で整理します。
- 強(Primary level)
→ 文中で特に目立つ音(リズムの山)
- 中(Secondary level)
→ 語内部を支える音
- 弱(Unstressed)
→ 短く・曖昧に処理される音
※ ここで示す強弱は「辞書的な語強勢」そのものではなく、
実際の文中での相対的な聞こえ方を視覚化したものです。
強弱を可視化した文(例)
→ 強弱の「山と谷」が、視覚的にも確認できます。
He STARted comPOSing at the AGE of FIVE and WROTE MORE than SIX HUNdred PIECes of MUsic
STEP 3:発音記号(IPA)で確認する
次に、同じ文を IPA(国際音声記号) で見てみましょう。
本記事での表記ルール
ここでは、辞書的な正確さよりも、文中で音がどのようにつながり、弱化して聞こえるかを
視覚的に把握することを目的としています。
hi
ˈstɑrt
ɪd
kəm
ˈpoʊz
ɪŋ
ət
ðə
eɪdʒ
əv
faɪv
ən
roʊt
mɔr
ðən
sɪks
ˈhʌn
drəd
ˈpis
ɪz
əv
ˈmjuz
ɪk
- 赤色:母音
- 青色:子音
- 文字サイズ:文中での相対的な強弱
- ˈ(強勢記号):強勢位置の目印
※ 音素ではありませんが、視認性のため子音色で表示しています
STEP 4: 英語の音声変化(連結・脱落・弱化)
ネイティブスピーカーは、単語を一語ずつ区切って発音していません。
実際の発話では、
- 音をつなぐ
- 不要な音を落とす
- 機能語を極端に弱める
といった 音声変化 が常に起きています。
※ 以下のカタカナ表記は、日本語話者が音の流れを掴むための近似表現です。
連結(Linking)
連結(Linking)とは、語末が子音で終わり、次の語が母音で始まるときに、
音の切れ目を作らず、連続した一つの音の流れとして発音される現象です。
- composing at → /kəmˈpoʊzɪŋət/
「コンポージング・アット」ではなく「コンポゥズインガッ」
- age of → /eɪdʒəv/
「エイジ・オブ」ではなく「エイジョv」
- five and → /faɪvən/
「ファイブ・アンド」ではなく「ファイヴァンd」
- pieces of → /ˈpisɪzəv/
「ピーシズ・オブ」ではなく「ピーシゾv」
脱落 (Elision)
子音と子音が続いた時に前の子音が省略される現象です。
- started composing → /ˈstɑrtkəmˈpoʊzɪŋ/
「スターティド・コンポージング」ではなく「スタrティッコンポゥズィン(グ)」
- at the → /ətðə/(t が弱化・脱落)
「アット・ザ」ではなく「アッザ」
- wrote more → /roʊtmɔr/
「ロウト・モア」ではなく「ロウッモr」
- six hundred → /sɪksˈhʌndrəd/
「シックス・ハンドレッド」ではなく「シksハンドレッd」
- of music → /əvˈmjuː.zɪk/
「オブ・ミュージック」ではなく「オvミュゥズイッk」
弱化 (Reduction)
機能語の母音が、曖昧母音 /ə/ などに変化します。
- He → /hi/ (「ヒー」ではなく、小さく短く「ヒ」)
- at → /ət/ (「アット」ではなく、小さく短く「アッ」)
- the → /ðə/ (「ジー」ではなく、小さく短く「ザ」)
- of → /əv/ (「オブ」ではなく、小さく短く「アv」)
- and → /ən/ (「アンド」ではなく、小さく短く「アヌ」)
- than → /ðən/ (「ザン」ではなく、小さく短く「ザヌ」)
母音衝突を避ける「つなぎ音 /j/」
母音が連続するとき、滑らかにするため /j/ が入ることがあります。
- the age→/ði/ /eɪdʒ/ (ジ・エイジ)ではなく、/j/を入れて/ðijeɪdʒ/ 「ジィエィジ」)
実践|発音を改善するための具体的な練習方法
- まずは 単語単位で正しく発音できるようにする
- 文全体を「単語読み」で読み、音声認識されるか確認
- 連結・脱落・弱化を意識して再度読む
- 録音して、自分の音を客観的に確認する
このプロセスを踏めば、発音は 感覚ではなく再現可能な技術になります。
まとめ|「通じる英語」は音の設計で決まる
英語らしい発音とは、
- 内容語をしっかり立て
- 機能語を軽く処理し
- 強弱のリズムを作り
- 音声変化を自然に受け入れること
によって成立します。
最後に
英語の発音は、「才能」ではなく 構造理解と訓練の積み重ねです。
音を設計できるようになると、英語は一気に「通じる音」に変わります。